音楽ビジネスモデルの変遷 モーツアルトからマイケル・ジャクソンまで
『音楽産業』は過去の歴史から、権利とテクノロジーに大きく関与して形態を変化してきた。
音楽ビジネスモデルの変遷
紀元前
水オルガンの発明
紀元前264年 クテシビオスの水オルガン など
6世紀〜15世紀
中世西洋音楽 - Wikipedia
グレゴリオ聖歌の時代
www.youtube.com
ローマカトリック教会の公式な聖歌として、ローマ典礼に基づくミサや修道院の聖務日課で歌われる
5線譜の発明
9世紀の『ネウマ譜』歌集
ネウマ譜が16世紀に現代でも用いられる五線譜に発展
ルネッサンスの時代
15世紀
1455年、グーテンベルグ印刷術を発明
1501年、オッタヴィアーノ・ペトルッチ ( Ottaviano Petrucci )が、楽譜印刷に成功 ※グーテンベルグの印刷樹の46年後
ヴェネツィア元首に20年間の楽譜印刷独占権を申請済み(1498年)。
オッタヴィアーノ・ペトルッチの印刷楽譜
楽譜印刷を発明したイタリア人の話 : ルネサンスのセレブたち
印刷術が発達していたため五線譜の楽譜は、印刷物でも伝搬される。五線譜を読んで演奏できる音楽技術職人の時代。
バロック音楽
古典派音楽
クラシック音楽の歴史において、1730年代から1820年代まで続いた時期の芸術音楽の総称
18世紀
ビジネスモデルが不遇だったモーツアルトとベートーベンのフリーランス時代
モーツアルトの時代(18世紀)の音楽ビジネスモデルは、宮廷お抱えの音楽家時代。1756年生まれ。3歳からチェンバロ、5歳で作曲。天才のまま1791年、享年35歳 貧乏なまま天才モーツアルトは、亡くなってしまった。フロー型ビジネスモデル
モーツアルトは25歳の時、ウィーンでフリーランスの音楽家となり、『予約演奏会』という前売り興行システム(
コンセール・スピリチュエル )を発明するが、出費のほうが上回る…。ベートーヴェンの『自作発表会』も発表するコストが上回る…。ベートーヴェンはモーツアルトの14歳年下(1770〜1827年享年56歳)
1787年(17歳)、音楽の都ウィーンを旅行してモーツァルト(当時31歳、ベートーヴェンとは14歳差)を訪問し、ピアノの腕前を高く評価される。この時、「今にこの若者は世の話題をさらうだろう」と予言されたとも。弟子入りが認められたが、母の結核が悪化しボンに帰郷、その死を看取る。
飛ぶ鳥を落とす人気作曲家だった30歳のロッシーニは、ウィーンを訪れた時に52歳のベートーヴェンのアパートを表敬訪問し、その貧乏暮らしに涙した
19世紀
1877年エジソンが蓄音機を発明 蝋管で主に録音保存用
1887年、元ベル研究所のエミール・ベルリナー 『グラモフォン』発明
円盤型で主に再生専用 現在のレコード 量産可能で裏面(B面)も使用できた。
1895年、ベルリーナ・グラモフォン(Berliner Gramophone)設立
後のビクタートーキングマシン(Victor Talking Machine Company)や英グラモフォン(現・英EMI、英HMV)と変遷する。
プッチーニの時代(19〜20世紀初頭)は、『オペラ』という「総合舞台芸術(ショー興行)」からの印税ビジネスモデル。ストック型ビジネスモデル。
1858年〜1924年(享年65歳)
ヨーロッパの都市にはほとんど公立の劇場があり、王族や貴族がパトロンの宮廷劇場から、一般市民の娯楽施設である市民劇場まで、映画もテレビもない時代の唯一の「娯楽施設」として機能していた。
演劇だけ音楽だけ舞踊だけの興業ももちろんだが、中でもオペラはそれらすべてが合体した究極の「総合娯楽舞台」。ドラマもあれば音楽もあり、主人公の英雄やヒロインたちに心酔し、美術や衣装も楽しめ、時にはバレエや踊りが加わることもある。これはもう究極のエンターテインメント
家庭にアップライトピアノが普及
1827年にアップライトピアノは発明されるが、ピークは1905年。
□アメリカにおけるピアノ(アップライト)の製造は 1905 年に40万台でピーク
1914〜1918年 第一次世界大戦
1929〜1941年 世界大恐慌
ガーシュウィン の時代(20世紀中頃)は、音楽出版社からの『楽譜』の売上歩合による印税ビジネスモデル
1898年〜 1937年享年38歳
デパートメントストアでピアノを演奏し、楽譜を販売する。
音楽出版社は楽曲の楽譜と共に演奏化権というライセンスビジネスの営業も兼ねだした。
ガーシュウィンの『スワニー(SWANEE)』を「アル・ジョンソン」が歌い、著名となった。アル・ジョンソンは最初のトーキー映画『ジャズシンガー(1927年)』の出演アーティスト。
映画が「サウンドトラック」と出会った瞬間だ。
1936年 レコードのレコーディング
ロバート・ジョンソンの時代から、レコードによる演奏ビジネスモデルが開始
1911年5月8日 - 1938年8月16日 享年27歳)
Robert Johnson - The Complete Recordings - Essential Classic Evergreen
1950年代 (シングル45回転1949年) 、(LP longPlay 33回転1950年)
ジュークボックス(ドーナツ盤)の時代へ
トランジスタラジオの普及
プレスリーの時代は、ラジオのヒットチューンによるラジオ&レコード、ジュークボックスの時代へ そして映画のサウンドトラック盤
1956年映画 『love me tendar』
Elvis Presley - Love Me Tender 1956
ジュークボックスは飲食街での必須の音楽ツール
ザ・ビートルズの時代(1962年デビュー〜1970年)は、モノラルレコードからステレオへの変化の時代 プロモーションビデオへ
そして、音楽出版社をアーティストが経営する時代へ
Apple Records
- 作者: ブライアン・サウソール,ルパート・ペリー,上西園誠
- 出版社/メーカー: シンコーミュージック
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「 レコードビジネスにおけるライセンス契約」
https://system.jpaa.or.jp/patents_files_old/201110/jpaapatent201110_015-022.pdf
1979年 ソニー『ウォークマン』発売
録音、スピーカー機能のない
再生専用のモバイルテープレコーダー
マイケル・ジャクソンの時代が到来…。MTV時代のプロモーションビデオと連動するヒットの時代
MTV開局 1981年8月1日から1年後、マイケル・ジャクソン「Thriller」発売(1982年12月1日)
PVマーケティングの時代
「ビリージーン」、「今夜はビート・イット」、「スリラー」。
アメリカ議会図書館には「スリラー」のフィルムが永久保存。黒人のPVが差別なく流れるMTV時代へシフト…。
MTVと共に80年代のメディアミックスが展開される。
1980年『レンタルレコード』誕生!
日本独自の「貸与権(1984年)」
1980年 黎紅堂(れいこうどう) オープン
1981年、黎紅堂、友&愛、レック、ジョイフルといった当時のレンタルレコード店大手4社に対し、レコード会社13社と日本レコード協会が提訴。
1984年3月 日本レコードレンタル商業組合(現・日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合)という業界団体設立。
1984年5月 国会、『貸与権』で合法化
ハードウェアメーカー(ソニー等)のオーディオ機器メーカーのロビー活動
日本レコードレンタル商業組合は日本音楽著作権協会に著作権使用料を支払っていくことになった。6月に貸レコード暫定措置法が施行
1984年に著作権法が改正されてレコード製作者に貸与権と報酬請求権が認められた。
1991年、著作権法の改正により、新譜のレンタル禁止期間が1年間に延長。
レンタルビデオ店の普及
レンタルのビデオテープが高価であることから、1990年頃からPPT (Pay Per Transaction) システムといわれる方式が登場
これは映画の興行収入モデルをベースにしており、映画制作会社からソフト(=フイルム)の使用許諾を得たリース会社(=配給会社)は、レンタルビデオ店(=映画館)に対してソフトのリースを行い、レンタルビデオ店は貸出実績(=入場料収入)に応じて売上の中からロイヤリティをリース会社に支払い、リース会社は制作会社へ使用料を支払う。
1982年10月1日 CD誕生 フィリップス&ソニーのクロスライセンス
CDの普及はレコードの歴史を変えた。同時にアルバムの「アート」をプラスティックに変革させ、リッピングされるためのメディアとしてのパッケージへと歩み始める。
エジソンのホノグラフ発明から100年余、レコード技術は、大体四半世紀(25年)ごとに、大きな技術革新を迎えてきた。円筒方式から円盤レコードへ、電気式レコードの登場そしてLPレコードへ、モノホニックからステレオへ。そして100年目にデジタルオーディオ技術が花開いた。
1986年には生産枚数でLPレコードを逆転。1987年(5年後)には売上高でも上回り、91年10月(9年後)には日本国内のレコード生産は中止に追い込まれました。円盤型のレコードが発明されて約100年、LPの歴史は40年以上続きましたが、ちょうど10 年で媒体の転換が完了したのです。
1996年 DVD発売
ランダムアクセス、チャプター、オーディオコメンタリー、VHSビデオからの利益率と生産性向上
DVDはCD同様に販売開始から、5年目で全市場へ浸透しスイッチしていく。10年目で過去メディアは市場から消える。
【電子産業史】1996年:DVDの開発 | 日経 xTECH(クロステック)
1997年、NETFLIXがオンラインでDVDレンタルの創業。
サービス開始は1998年
https://ja.wikipedia.org/wiki/Netflix
1998年8月15日 iMac販売 CD-ROM
1999年 MP3のパイレーツ『Napster』PtoP革命
1999年12月にRIAAがNapsterを提訴し、Napsterは非商用目的で共有するのは合法であると主張したが、米連邦地裁からサービス停止命令が出され、Napsterもこれに反論し続けたが、2001年7月にシステム障害を理由として、ファイル共有ソフトとしてのNapsterはサービスを終了した。
2000年1月 pandra internet radio 広告音楽ストリーミングスタート
2000年3月4日 プレイステーション2発売 DVD搭載
2001年1月 Apple iTunes 配布
リッピングして内蔵HDDで楽しむだけの音楽管理ソフト
2001年11月17日 Apple iPod 販売
1,000曲をポケットに入れて持ち運べる超小型MP3プレーヤー
15 years ago today, Steve Jobs unveiled the first generation iPod. Here's how far the device has come: https://t.co/QGkBZnghYF pic.twitter.com/qsSHovzVAE
— CNN Tech (@cnntech) October 23, 2016
2003年4月「iTunes Music Store(iTMS)」を開始
音楽を1曲づつ 0.99ドルで購入できるサービスを開始
米Apple Computer社は「iPod」に向けた音楽配信サービス「iTunes Music Store(iTMS)」を開始
2003年 『レコード権(原盤権)』『サウンドエクスチェンジ』
2003年『レコード権(原盤権)』『サウンドエクスチェンジ』の誕生
アメリカでインターネット・ラジオや衛星ラジオをやりたいのなら2種類の非営利団体にお金を払わなければならない。音楽著作権についてはASCAPやBMIという非営利団体に使用料を支払う。その後これらの団体は作詞作曲家と音楽出版社に使用料を分配する。レコード(原盤権)については「サウンドエクスチェンジ」という非営利団体に使用料を払う。その後この団体は原盤権を保有するレコード会社と演奏したアーティストに使用料を分配する。
現在「サウンドエクスチェンジ」はレコード協会から離れ独立機関となっている。インターネット・ラジオの最大手はパンドラで衛星ラジオの最大手はシリウス。スポティファイのような定額制音楽ストリーミング・サービスはラジオではないので「サウンドエクスチェンジ」に払わない。個別に原盤権保有者に音源使用料を支払っている。
『サウンドエクスチェンジ』のビジネスロイヤリティは、 2014年で7.7億ドルへ成長
「サウンドエクスチェンジ」印税よりも「サブスクリプション」印税
定額制音楽ストリーミング・サービスは、個別に原盤権保有者に音源使用料を支払い、そのライセンス料金が、2015年に 12.19億ドルに。「サウンドエクスチェンジ」は8億ドル。広告レベニューシェアは3.8億ドル
アメリカではインターネット・ラジオのパンドラや衛星ラジオのシリウスはレコード(原盤権)使用について「サウンドエクスチェンジ」という非営利団体に使用料を払う。その後この団体は原盤権を保有するレコード会社と演奏したアーティストに使用料を分配する。ビルボード誌によると50%はレコード会社に、50%がアーティストに支払われるという。
では定額制音楽ストリーミング・サービスでの音源使用料はどう分配されるか。ラジオではないのでサウンドエクスチェンジは介入しない。あくまでも使用料の交渉はレコード会社とストリーミング・サービス会社間で行われる。ソニーミュージックはこれらのストリーミング・サービスに、「販売」や「配給」という概念で対応している。ソニーミュージックが受け取った収入の15%程度をアーティストに支払うというものだ。これはiTunesストアーで有料ダウンロード販売をしたら、レコード小売店同様、iTunesが30%を取り、残りの70%に対してレコード会社はアーティスト側におおよそ15%を支払う。
2004年 ブロックバスター(レンタルビデオ)の最盛期
「ブロックバスター」は、最盛期の2004年には全米に9,000店舗を展開したレンタルビデオ店。Netflixなどの動画配信サービスの普及に伴って経営が悪化、2010年には破産。
2006年4月23日、音楽ストリーミング Spotify スタート